今回のテーマは、オンライン商談でつくるお客様との「適切な共犯関係」についてです。
「営業が提案し、お客様が検討する」の世界観では、商談の温度が上がりにくいものです。理想的なのは、「営業とお客様とが一緒になって、面白いことを議論しながら盛り上がっていくうちに、着々と前に進んでいる」状態ではないでしょうか。その際、営業には”お客様を巻き込む力”が問われます。
お客様を巻き込むための2つのポイント
「お客様を巻き込む力」というと、華麗なファシリテーションを想像されるかもしれませんが、そんな難しいことをしなくても大丈夫です。まずは以下の2点を押さえましょう。
●自分が話しすぎず、お客様に話していただく時間を長くする
●「お客様が今この場に時間を使う理由」をつかんでおく
これに基づいて時間配分を考えていきます。
「用意してきた資料を話す時間が8割、残りの2割で質疑応答」という時間配分だと、オンライン商談での温度感は上がりません。「準備した資料をそのまま話す時間」を長くするほど、お客様とズレるリスクも上がってしまいます。事前準備で「最低限これだけは伝える」を絞っておくことで、商談が双方向になりやすいです。
「今この場に時間を使う理由」に応える
「最低限これだけは伝えること」を絞る際には、つい、営業が伝えたいことを起点に考えてしまいがちです。一方的なPRでは、お客様の熱い反応を引き出せません。大事なのは、「お客様が今この場に時間を使う理由」へ応えるという視点です。そこがかみ合っていれば、自然とお客様の発言や反応が引き出されていきます。
「お客様が今この場に時間を使う理由」へ応えるためには、お客様の興味・関心について、細かい粒度で仮説を立てておく必要があります。商談の時間を、
●予め用意してきた情報を伝える時間:2割
●お客様と双方向に議論する時間:8割
という割合で組んでおくと、自分の仮説が当たったか外れたかはすぐにわかります。
「予め用意してきた情報を伝える時間が2割ということは、資料を少ししか出さないということですか?」という質問をよくいただきますが、8割の議論の時間で、場の流れに応じて必要な資料を追加で出すのがよいと思います。とにかく「お客様とのズレに気づかないまま、多くの資料を一方的に説明する」展開にしないことが大切なのです。
コメントの余地を残すプレゼン
お客様を巻き込むためには、「つっこまれビリティ」も重要です。完璧なプレゼンで「さあどうだ!」とぶつけるよりも、お客様が「つい、コメントしたくなる」要素をプレゼンに盛り込んでおくことによって反応を引き出せるからです。「コメントの余地」を意図的に残しておいて、お客様の台詞をどんどん深掘りしていきましょう。
画面共有で「一緒に作っている」感を
オンライン商談になると、「会議室で一緒にホワイトボードに書きながらの議論」がやりづらくなりますよね。
そこで、PowerPointは編集モードで画面共有し、お客様と一緒にスライドをいじるという方法をおすすめします。見た目はぐちゃぐちゃの資料になってきますが、それでよいのです。ぐちゃぐちゃな方が「一緒に作っている」感が高まってきます。
議事録も、終わってから送るより、ラフでよいので商談中にメモを画面共有しましょう。この時間が意外と大事です。お客様も、メモを見ていると「そういえば……」と漏れていた大事な観点が出てくることがあります。議事録の共有は、ラスト5分などではなく、ざっくりしたメモを手前の段階で一度見せてしまうのがよいでしょう。