“ご両親に挨拶を”が逆効果になる瞬間:日経ビジネスオンライン
質問力:”ご両親に挨拶を”が逆効果になってしまうということはどういうことか?
質問力を活用した営業の場面で相手の方が現場のご担当者だった場合、キーパーソンにご登場いただくために、「なんとか上の方にご同席いただけませんか?」というセリフを出すことがあると思います。
この場合のキーパーソンとは、上長の方、経営者など、「意思決定ができる方々」ということになりますが、よく使ってしまいがちなこのセリフは、使い所によっては注意が必要です。
キーパーソン第一主義に陥っていませんか?
特に、最近私が研修やコンサルティングでご一緒するお客様のお話を聞いていて感じることですが、昔よりも明らかに、「意思決定のキーパーソンになる方よりも現場の担当者の方が、提案の内容に関して相当詳しい」という状況が増えてきており、実際現場の方の影響が無視できないというケースが多々あります。
私が今一度強調したいのは、目の前にいる現場の担当者をしっかり巻き込まず、その方を通り越して「上の方を出していただけませんか?」というニュアンスで捉えられてしまうことのリスクについてです。
キーパーソンを連れてくるのは誰?
ある会社の営業の方に同席をさせていただいた機会や、実際に私が過去に営業を受けていた場面を思い出してみると、「上の人を出してくれませんか」ということを軽々しく言ってしまう営業の方が、ある一定数いらっしゃいました。
営業の立場としては、なるべく上の役職の人に会いたい、と思うのは当然のことです。
特に意思決定者やキーパーソンに会わなければならないというのは、営業における定石中の定石と言っていいくらいのことではあります。
ただ、上の人を引っ張り出したいという場面で、実際にその「上の人」を連れてくるのは誰かといえば、目の前にいるご担当者様なのです。
「キーパーソンに会いたい」と思ったとき、目の前にいるご担当者様が、しっかりと自分の味方についてくださっているのかどうか。
そして、目の前のご担当者様と、上席の方との関係がどうなのか。
このようなことをしっかりと特定しないうちに、目の前の担当者様を軽々しく扱って、「あなたはいいから、はやく上の人を出してください」というニュアンスに捉えられてしまうと、せっかくこれまで進めてきたプロセスが無駄になってしまうこともあります。
目の前のご担当者様を大切にしている気持ちを伝えるには
このような場面では、目の前にいるご担当者様をしっかりと巻き込めるかどうか、確認しておきたいですよね。
そんな時に私がオススメしたいのは、
「〇〇さん個人としてはどのようにお感じになりますか?」
というセリフです。
たとえ相手が現場のご担当者様だったとしても、まずこの方に動いていただかないといけないという場面であれば、「上の人を出して欲しい」というセリフよりも先に、目の前のご担当者様の個人的な意見を聞くことが必要です。
ここで、ご担当者様にはどのくらい響いているのか、きちんと理解されているのかどうかを確認します。
このときに前向きな意見が返ってきたら、
「〇〇さんはこの後、上の方とご相談されたりするんですか?」
「この内容って会議にかけられたりするんでしょうか?」
というように、社内の意思決定プロセスについて質問し、状況が見えてきた段階で、自分がどのようにアプローチしていったらいいのかということを考えていきます。
・目の前の方に対して「あなたを大事にしていますよ」というメッセージがしっかり伝わっていること
・目の前のご担当者様がどういう感触を持っているのか
・目の前のご担当者様には、引っ張り出したい方をきちんと出していただけるような力があるのか
・この後、どのようなコミュニケーションの段取りが必要なのか
などといった算段がしっかりと積み上がった状態で「上の方にお会いしたい」というリクエストをするような流れであれば問題ありません。
そこを焦って、「あなたはいいから」という風に目の前の人を軽んじて意思決定者を引っ張り出そうとしてしまうということがないように、注意をしていきましょう。
これは、結婚を考えるカップルと同じですよね。
結婚を意識した異性に対して、「早く両親に合わせて」と言っても、プレッシャーがかかるだけです。
営業現場でも同じように、目の前の人の気持ちを確認せずに「キーパーソンを出してください」と焦ってしまわないように、まずは大切にすべきご担当者様の感触を探り、きちんと段階を踏んでからキーパーソンの方を連れてきていただけるように打診してみましょう。