営業の方から「値段しか見ないお客様に提案するのが難しい」、「価格競争に陥らない方法はありますか?」といった相談をよくいただきます。鍵となるのは、お客様の判断軸を(良い意味で)揺さぶる3つの質問です。
①網羅感を問う
②具体化を問う
③優先順位を問う
「わかりやすい基準」に基づく判断
3つの質問は、不動産の部屋探しのメタファーで覚えるのがコツです。
引っ越しの部屋探しの場面をイメージしてみてください。あなたが街なかにある不動産屋さんに入るとき、最初に想定していることは、
●家賃
●間取り
●駅から徒歩X分
●築年数X年まで
といった「数字で表しやすい指標」「わかりやすい基準」だと思います。なぜなら、まだ物件のイメージが湧いていないからです。
「どんなお部屋をお探しですか?」という質問に、家賃・間取り・駅徒歩分数・築年数といった希望情報を回答すると、物件のリストが出てきます。これは、いわば「わかりやすい指標のみに基づいて進んでいる商談」にあたります。
判断基準を変化させる問い
しかし、部屋探しはここで終わるわけではありません。「営業からの質問」と「内見」によって、幅が広がっていくのです。
家族構成や仕事の様子などがそれとなく会話に出てくると、
●仕事が忙しいから、コンビニ・スーパー・クリーニングが近いほうがいい
●子供の安全のために、交通量が多い大通りから遠いほうがよい
●気軽に行ける飲食店が近くにあるとよい
といった人それぞれの「希望条件」がさらに明らかになっていきます。ここでは、お客様側の判断基準が以下のように変化しているのです。
●想定していなかったが、考えておくべき項目の抜け漏れが見つかる(網羅感) 例:小学校の学区
●曖昧としていた判断基準が具体化される 例:「落ち着いた場所」がさらに詳しく
●優先順位がはっきりする 例:部屋の広さより利便性が大事
判断基準が変わってくれば、そこで「価格よりも大事なものは何か?」についてのお客様の思考が深まります。このプロセスがないと、購買側はどうしても「わかりやすい、当初の基準」に基づいて判断しがちなのです。 このように、営業側から「網羅感」「具体化」「優先順位」を問いかけることで、お客様の判断基準を揺さぶってみましょう。
「値段しか見ないお客様」の解像度を上げていくと、
①購買経験がほとんどないため判断基準がわからない
②購買経験が豊富すぎて判断基準が固定化されている
のいずれかに集約されます。
①の場合は「具体化→優先順位」
②の場合は「網羅感→優先順位」
の展開で流れが変わることが多いので、3つの質問をぜひ試してみてくださいね。