若手営業に対し、「お客様の立場に立って考えろ」「お客様目線で考えろ」と指導する営業マネジャーの方も多いのではないでしょうか。
しかし、よかれと思って行うこのようなスタンス指導が、なぜか激しく空回りになってしまうことがあります。
今回はこの、空回りの構造についてお話します。
若手営業に対して行うべきなのはスタンス指導ではなく、以下の3つのポイントがあります。
①優先順位の確認
②ルールの議論
③お客様業務の理解
①優先順位の確認
営業マネジャーから「お客様の立場に立って考えろ」と言われても、本人は「いや、考えてますが…」となってしまいます。
それを「スタンスの問題」で括るのはとても危険です。
営業という仕事をしていて、お客様のことを全く考えていない人はいないはずです。
では何が問題かというと、「優先順位の認識ズレ」が起きていることです。
「お客様目線に立ったら、テンプレの会社紹介はNG。事前にリサーチして、お客様に合ったストーリー考えなければいけない」
それはメンバーもわかっています。
ただ、ここで起こる「優先順位のズレ」は往々にして、「明日の訪問準備」と「既存お客様の問合せ対応」どちらに時間をかけるべきかという優先順位が不明確であることが原因だったりします。
「スタンスがなってない」という指導は、全ての問題を包含できるため、マネジャー側からすると便利な言葉です。
しかしメンバー側からしてみると、何を言っても「それは君のスタンスが悪いのだ」と指摘されてしまう恐怖観念が植え付けられてしまいます。
「優先順位の認識がどうズレていたからそうなってしまったのか」を共に確認することこそが重要なのです。
②ルールの議論
「普通、お客様への資料は、相手の読みやすさを考えたら、英数字は全角じゃなくて半角だよね」
よくある光景です。
しかし「普通は」「常識的に考えると」は危険ワードです。
常識は人によって違いますし、この世に「普通の人」は存在しません。
もし意見が分かれるポイントがあった場合は「ルールの議論」で対応するべきです。
お客様向け資料に使う英数字は全角でもOKか、半角でないとダメか?
こういった類の話は、各人のバックグラウンドによって基準ラインが異なるので、
「ルールについてきちんと議論する」
「合意されたルールは守る」
「ルールに異論がある場合は意見表明する」
という運用をしない限り、この問題はなくなりません。
③お客様業務の理解
何かのルールに対し、「なぜそのルールがあるのか」について、メンバーが腹落ちしない場合もあるでしょう。
そのようなときには、お客様の業務への理解を促すような説明が必要です。
「電話番号やURLが全角表記されていると、リンクとして認識されない」
「大量の情報を扱うお客様は、電話番号やURLがリンクとして認識されないと業務が滞るので、全て半角表記で英数字を処理している」
「そのようなお客様に、全角の英数字でデータを渡すと、お客様の負担を増やしてしまう」
このように、きちんと知識を教えていかなければいけません。
正すべきは優先順位の認識とルール、教えるべきは知識
①優先順位の確認
②ルールの議論
③お客様業務の理解
これらをやらずに、「メンバーのスタンスが悪い」という前提で指導をしてしまうと、本人はお客様のためにと思って活動しているのに、上司から認められないストレスとモヤモヤがたまってしまい、上司に本音が言えなくなります。
多くの営業マネジャーは「スタンスは”根幹”だから、スタンスが良くなれば色々な行動も一気に改善して成果が上がる」と考えます。
ただ、それが「相手のスタンスが間違っているという前提の指導」につながると、激しく空回りしてしまいます。
正すべきは、優先順位の認識とルール、そして教えるべきは知識です。
私自身もスタンスは大事だと考えます。
しかし、メンバーに良いスタンスを教えたいなら、
●上司自身が、スタンスの体現された行動を取る
●メンバーが、自然とスタンスの重要性に気づける環境を作る
のいずれかしかなく、「誤ったスタンスを指摘する指導」をいくらやり続けても、結果は変わらないのです。