2024.06.03

仮説が立てられない若手営業の育て方

多くの営業マネジャーは、考え方を教えたりコーチングをしたり、若手の「頭の中」に対して働きかけようとします。
しかしこれでは、コツがつかめない若手との間で、「禅問答」のような指導が繰り返されてしまいます。
見るべきは「頭の中」ではないのです。

仮説が立てられない若手営業に「このお客様の課題は何だと思う?」のように聞いても、「どこまでわかっているのか/いないのか」「何までは考えられる/られないのか」がいまいちわかりません。
そこで仮説の立て方を教えることになりますが、その際多くの営業マネジャーは「思考回路」だけ教えて終わりにしてしまいます。

考え方や思考回路を教えるときは、相手のタイプに合わせて、「可視化でき、フィードバックができるツール」に落とし込むのがポイントです。

若手のタイプを大きく2つに分けて考えてみましょう。
①アナログ派→メモを手書きで取るのが好き 
②デジタル派→メモはPCやスマホで打つのが好き

この、アナログ派とデジタル派、それぞれの育て方についてお話しします。

①アナログ派の若手を教えるとき

「マネジャーの手書きノートを見せる」のが最初のステップになります。
2段階の事例を若手に見せます。

1つ目は「拡散」。ぐちゃぐちゃのメモ書きです。こちらは色々と書き散らかしてOKです。
そして、 2つ目は「収束」。構造が整理されてきた段階です。

拡散段階のノートはこのようにぐちゃぐちゃです。
アイデアや思いついたこと、お客様から聞いたことなどをたくさん、整理することを考えずに書き出します。
※実際のお客様の例は出せないので、以下は私がダイヤモンド・オンラインの記事を書いた時の下書きです

そして、「収束段階」のノートは次のような形です。
言いたいことは何か、大事なことは何か、それぞれの情報はどうつながっているか、図解にしています。

マネジャーの手書きを見せる際に大事なのは、内容の質ではなく、
●拡散段階では、適当な思いつき&ぐちゃぐちゃでいい 
●収束段階にきて、はじめてまとめに入る
という2段階を教えることです。
そして、メンバーにこの2種類の書き方を教えたら、以降、メンバーのメモを共有してもらうことが大事です。

多くのメンバーは、マネジャーに対して「自分はあの人みたいにすっきり考えられない」と思っています。
そのため、「ぐちゃぐちゃの拡散」と「まとめに入る収束」とを両方見せて、そのギャップを理解させることが重要です。
その後は、メンバーに拡散の手書きをいっぱいやってもらい、「量稽古」をします。

ちなみに私の会社には、私の手書きPDF、メンバーが書いたPDFのストックが大量にあります。
かなりぐちゃぐちゃでよくわからない状態ですが、拡散段階の手書きの量稽古の後に収束に入らせる一連のプロセスは、”可視化されていて、フィードバックが可能”になります。

②デジタル派の若手を育てるとき

まずやることはPCとスマホの確認です。
下記4つについて、どうやっているかを本人から見せてもらいます。

(1)日々のリサーチから、良さそうな情報を格納する 
(2)思いついたアイデアのメモをストックし、下書きする 
(3)社内のお手本資料を保存する
(4)何かやるとき、社内の情報を探す

(1)日々のリサーチから、良さそうな情報を格納する 
若手ならデジタル慣れているだろうと思うかもしれません。
しかし、「検索」のやり方を知らない若手もけっこういるのです。
このような若手には検索のお手本を見せます。
そのために、マネジャーがPC操作をしている場面を動画に撮っておくのがおすすめです。(こちらは私が以前撮ったものです)

リサーチの基本的なスキル(filetype:pdf や検索オプションなど)を教えたら、「情報の格納」および「保存場所」についてもコツを教えておきます。
私の会社では、入社した若手へ初日に教えるのはEvernoteのWebクリップと、Evernoteのノートブックの話です。
情報の扱い方をインストールするのです。

(2)思いついたアイデアのメモをストックし、下書きする 
このやり方についても、フォルダやノートブックをメンバーと共有し、「マネジャーの途中経過」を手本で見せたり(これはアナログ派と同じです)、「メンバーの途中経過」も見えるようにしておきます。
”可視化されて、フィードバックできる”ことが必須です。

(3)社内のお手本資料を保存する
若手が、社内に出回っている良質な資料を、自分のお気に入りフォルダに入れて使いこなせるように指導します。
このメンバーの「お気に入り」フォルダはマネジャーと共有します。
社内に回っている情報を全員がチェックしているとは限らないので、動きをフォローします。

(4)何かやるとき、社内の情報を探す
何かやるとき、社内の情報を探せず、迷子になったり自己流でやっている若手が放置されがちです。
これを防ぐため、社内にあるナレッジ資産の場所を探しやすいように、フォルダ構造などを整理しておきます。

これら(1)〜(4)が一通りできていれば、仮説を立てるための動作ができているかどうかを確認できるようになります。

さらに、デジタル派の若手に教えておくべきは、「画面録画機能の使い方」です。
PCやスマホの使い方は、画面録画をしてもらって、その動画を見ることができるかどうかで指導効率がだいぶ変わるためです。

「魚」ではなく「釣り方」を教える

アナログ派にしろデジタル派にしろ、一連の基本動作ができた状態で、マネジャーが「ワークシート」を作ってあげるとさらに効果的です。 
下記の図は、弊社で実際に使っている仮説を立てるときのワークシートです。
注意点としては、ワークシート単体だけだと「基本的な動作や考える筋肉」がつかずに条件反射で仕事してしまうことがあるので、魚を与えるのではなく釣り方を教えることです。

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