マネジャーが商談同行する場合、目の前で案件が落ちるのを見たくないため、メンバーが行き詰まった時や展開が危ない時には、ヘルプで介入するケースがほとんどではないでしょうか。
逆にマネジャーが同行していない商談では、どこでつまずいているのかは、闇の中に消えてしまうことが多いものです。
胆力のあるマネジャーの場合、案件の規模感によっては、落ちそうなのが見えていても、「失注で学ぶこともある」とあえて口を出さず、そのまま任せることもあります。
しかし実際には、そういったケースは稀です。
失注からの学びは本当に大きいにも関わらず、目の前で案件が落ちるのは避けたいというのがマネジャーの心情です。
では、どうやって「メンバーが取りこぼすポイント」を正確に知るのでしょうか。
手段は2つあります。
今回はこの2つの方法について紹介します。
決定場面のヒアリングに同行する
1つ目は、「失注した際、マネジャー同行でお客様への決定場面ヒアリングを行う」です。
特に接戦案件の決着がついたとき、「いつ、どの瞬間に(実質的に)案件が決まったのか」をマネジャーがつかんでおくことはとても重要です。
もしそれが当社のプレゼン直後だったら、何らかのミスをしてしまったのかもしれないし、上司の一声で決まったのなら、決裁者の評価ポイントをつかめていなかったことになります。
実力がまだ伴っていないメンバーの場合、お客様の主観的な、あいまいな情報を聞いて終わってしまうことが多いので、きちんと事実情報を確認できるようにマネジャーが同行するのがおすすめです。
この決定場面情報を聞いていくことで、メンバーだけでなく会社として多い失注理由が見えてきて、組織的な営業力強化につながるという副次的効果もあります。
ローテションの社内ロープレ
2つ目は、「社内研修で、一つの案件を模したロールプレイやシミュレーションを行い、マネジャーがオブザーバーを務める」です。
社内で営業ロープレをやるときに多いパターンは、「育成対象の若手が営業役、マネジャーが顧客役。若手の拙い商談に対し、顧客役のマネジャーが徹底的にダメ出しをする」というものではないでしょうか。
ただ、このやり方ですと、マネジャーが延々とダメ出しをして終わりになりかねません。
社内ロープレでは、顧客役・営業役・オブザーバーを回転させるのが肝です。
ローテーション・ロープレのメリットは沢山あります。
例えば、
(1)営業役の若手がうまくいかなかった場面を、お手本となるマネジャーが実際にどうやるのかその後すぐ見られる
(2)若手が顧客役を務めることで、営業からは見えなかった世界を知ることができる
(3)顧客の視点について皆で語りながら学びを深められる
単純にマネジャーが顧客役を務めて商談ロープレをやるだけだと、キーエンスやリクルートのような「元からロープレ文化が根付いている会社」以外は、ロープレの習慣が持続しづらいものです。
「顧客視点からの学び」を深める仕掛けを作っておき、営業の課題を見える化して解決する仕組みを社内教育に入れておくのがポイントです。
そして、「営業役・顧客役・オブザーバー」の三役をローテーションする商談ロープレには、隠れたメリットがあります。
それは、営業マネジャーがオブザーバーになることで、メンバーの課題を「じっくり観察」しながら考える時間を作れるということです。
マネジャーが顧客役を務めるだけだと、バイアスに基づいた助言で終わってしまいがちです。
今回は、「メンバーが取りこぼすポイント」についてお話しました。
失注した案件の決定場面のヒアリングにマネジャーが同行し、同時に3役ローテションの社内ロープレを取り入れることで、メンバーへの指導を建設的にしていくことができます。